立山黒部ジオパークとは
富山県東部(富山市~朝日町)と富山湾を含む「立山黒部」は、3,000m級の北アルプスと、そこから流れ出る急流河川が作った広大な扇状地をもち、その先には深さ1,000mを越える富山湾が広がっている。
わずか数十キロの間に4,000mもの高低差をもつ地域は珍しく、その大地には過去38億年の歴史が刻まれている。
北アルプスに積もる雪、扇状地を流れる大河、地下水が流れ込む富山湾。水が形を変えながら「立山黒部」を繋げている。この大地と水の巡りによって様々な動植物が息づき、それに見合った文化が華咲いた。
立山黒部ジオパークは、山・川・海の大地とそれに関わる生き物環境や地域独特の文化をあわせもった地球遺産とも呼べる地域である。
大地の歴史38億年
地球の創世記と言える38億年前から始まる「立山黒部」の大地の歴史は、大陸同士が衝突と分裂を繰り返してきた証拠を残してきた。大陸であった時代には恐竜が闊歩し、海ではアンモナイトが泳いでいた。
その後「立山黒部」は大陸から分離し、その間に日本海が広がり、現在の位置にまで移動し日本列島の原型ができあがった。
そして、急激に北アルプスが高まり、現在の山・川・海の大地へと変化していく。「立山黒部」を訪れたならば、地球規模の38億年の歴史を旅することができるだろう。
高低差4,000mの大地形
「立山黒部」の山々は、3,000mに達する立山連峰を含む北アルプスがそびえている。尾根沿いには氷河が削ったU字谷(圏谷)が残り、その下には、水が削った黒部峡谷を代表する深いV字谷がつくられている。削り取った土砂は、下流に扇状地をつくり海の中まで続いている。
その富山湾は海岸から急激に深くなり、20kmあまりで水深1,000mを超えており、日本三大深海湾の一つに数えられている。富山湾の海底谷は日本海の中央まで繋がる750kmの長い谷が続いている。
北アルプスを背にうけ、眼前の富山湾を見つめるとき、4,000mのダイナミックな空間を肌で感じることができるだろう。
豪雪地帯
立山室堂近くの雪の大谷には、毎年20m前後の雪が一冬で積もる。ユーラシア大陸と日本海、北アルプスの存在によって世界有数の豪雪地帯「立山黒部」を作りだしてきた。本当に驚くべき事は、この雪の壁が夏には融けてしまうことだ。その恵みは時を経て下流にもたらされる。 さらに世界有数の膨大な積雪は、立山や剱岳の周辺に厚さ数十m、長さ数百mの巨大な氷河を現在まで残されてきた。 天から舞い降りる雪の結晶を見ながら、その奥にある地球規模の出来事を想像してみよう。
水循環
立山に降る雪や雨は年間6,000mmに達する。水は山を削りながら深い谷を刻んできた。その下流には大量の土砂が運ばれ広大な扇状地を作り上げた。豊富な水は地下水となって扇状地を下り、その末端で伏流水として水辺の空間をもたらした。地下水は、世界的な気候変動による海面の上昇によって海に沈んだ海底林や埋没林を残す原因ともなった。
海に至った水は、豊富な栄養源をもたらし、天然の生け簀とも言える多種多様な魚類を育んだ。深海で暮らすホタルイカは、春に海面に顔を出し我々に神秘の光をみせてくれる。
至るところで湧き出す名水に触れながら「立山黒部」を繋げる水の巡りを味わってみよう。