立山黒部ジオパーク 高低差4000mロマン 立山黒部ジオパーク 高低差4000mロマン

ジオツアーを安全に楽しむために

立山黒部ジオパークにおいてジオツアーとして訪れる場所・対象、アトラクション、想定される事故の内容とその対策。

地形分類例

山岳稜線部(立山・剱岳、水晶岳、鹿島槍ヶ岳、白馬岳など)

活動 登山、山スキー
事象 天候急変、落石、落雷、雪崩、転倒、転落、滑落、高山病、疲労(熱中症・脱水症・低体温症)、凍傷
対策
  • 身体能力にあった行動計画
  • 装備のダブルチェック
  • 登山届けの提出
  • 気象と雪質に関する十分な知識など

里山~低山・森・丘陵(八尾、山田、有峰、上市川など)

活動 トレッキング、山菜採り
事象 危険動物、有毒植物、道迷い、滑落
対策
  • 二人以上での行動
  • 肌を露出しない服装
  • クマ鈴・なるべく大きな縮尺の地形図などの装備
  • 毒物の種類によって対処が異なることを知る

峡谷・沢筋・滝(北ノ俣岳、上廊下、下廊下、早月川など)

活動 沢登り、キャニオニング、渓流イワナ釣り
事象 増水・ダム放水、鉄砲水、低水温、溺水
対策
  • 現地での気象情報の入手手段の確保(ラジオの携帯)
  • 谷内からの脱出路の把握(地形判読能力)
  • 渡渉装備と充分な替え着の用意
  • 渓流の水量が不自然に少ないとき(川原が濡れている範囲よりも流れが低い)は上流で水が堰き止められていることを疑う

崖・崖錐・河岸段丘崖など(有峰、立山カルデラ、早月川、東福寺野など)

活動 地層露頭観察、化石・岩石・鉱物採集
事象 崩落、落石、転倒、転落、危険動物
対策
  • 安全帽の着装
  • 野生動物(カモシカなど)が落石させることもある
  • 落石音を聞いたときは周囲の人間に大声で伝えて落石方向を見極めつつ横方向に回避する

河床・ダム・堰・用水(常願寺川、黒部川扇央、早月川扇状地、片貝川扇状地など)

活動 川遊び、鮎釣り、化石・岩石採集など
事象 深み、急流、増水・放水、低水温、転倒、溺水、危険動物(※)など
※山と海が近い故にツキノワグマが川沿いの茂み伝いに海岸まで下りることもある
対策
  • 増水に備えて上流側の天候変化や水の濁りを注視する
  • ライフジャケットを着用する
  • ウェーダー(胴長)は落水すると足先が浮いてしまうことを理解する

海岸・磯浜・防波堤・消波ブロック
(岩瀬浜、蜃気楼・ホタルイカ、黒部川扇端湧水、ヒスイ海岸)

活動 ヒスイ探し(岩石・鉱物採集)、シーカヤック、磯釣り
事象 高波(寄り廻り波)、離岸流、危険動物、熱中症、転倒・転落、溺水、漂着ゴミ
対策
  • 浜辺や堤防上の濡れている範囲が波打ち際よりも広いときは高波が発生していることを疑う。
  • 河口付近で沖に流され出したときは一旦陸地と平行に泳いで河口から離れてから海岸に向かう。
  • 漂着ゴミには水害や不法投棄によって流されてしまった危険物(注射器・ガスボンベ・信号弾など)が含まれているため、発見時に珍しいからといって触れずに海岸管理者(自治体や港管理組合など)に通報する。

個別事例

高山病を発病したとき

初期症状 頭痛、食欲の低下・吐き気、不眠・眠りが浅い、顔や手がむくむ
高地(概ね 2500 メートル以上)に到着して数時間後から発症(特に就寝中)
現地での発症予防 高波(寄り廻り波)、離岸流、危険動物、熱中症、転倒・転落、溺水、漂着ゴミ
発症時の対策
  • それ以上の高地へは登らない。
  • 休憩していても症状が悪化するようであれば慌てずに低地に下る。
  • 山小屋によっては酸素吸入器が置いてあり回復が期待できる
  • 登山道で行動不能になってしまったときは山岳警備隊に救助要請する(山小屋に可搬の酸素ボンベが配置されている)

火山災害・活動的火山(室堂平地獄谷)

水蒸気噴火(噴石・降灰・火山泥流など)

  • 2015年現在、弥陀ヶ原火山防災協議会がハザードマップや避難計画を準備中
    • 室堂平の観光と登山の主要集客施設は、地獄谷から1km以内
    • 気象庁も常時監視体制(地震・地殻変動・遠望カメラなど)を構築中
    • 火山についての知識と解説(気象庁ウェブサイト)

火山ガス

  • 地獄谷は噴気活動が活発化し、火山ガス(亜硫酸ガス、塩化水素ガス、硫化水素ガス)中毒事故のリスクが高い。
    • 現在谷内の遊歩道は共用中止中(通行止め)である。
    • 積雪期も谷の周辺にはガスが溜まった雪洞が雪面の下に隠れており、危険なため決して近づかない(ガイドロープで規制範囲を指示)。
  • 高濃度の火山ガスが、風によって供用中の登山道(エンマ台から大日展望台の間)に度々流れてくる。
  • 高温泉、高濃度温泉
    • 地獄谷温泉(みくりが池温泉・雷鳥荘・雷鳥沢ヒュッテ・ロッジ立山連峰)の源泉も高濃度、強酸性になっている。
      • 湯あたり、湯ただれに注意するため、入湯時間を初めての人は 10分以内、入り慣れた人でもいつもより短めがおすすめ。
      • 湯上がりの際にはあがり湯で温泉を洗い流す。湯ただれしてしまったときに備えて保湿クリームを持参する。
      • 温泉の上手な入り方(日本健康開発財団ウェブサイト)

ジオツアーにもっていくと便利な物

  • 国土地理院発行の各種地図(地形図、土地分類図、都市圏活断層図など)
  • 地図が購入できる書店一覧 (日本地図センターウェブサイト)
  • 産業技術総合研究所(産総研)発行の地質図
  • 双眼鏡、単眼鏡(接近が難しい遠くの地形や露頭、地質、植生、動物などの観察に)
  • ルーペ、虫眼鏡(岩石の中の鉱物の観察に)
  • 巻き尺、ものさし(様々なものの写真を撮るときにその大きさが分かる指標として)
  • 現地で参考になる図書:地層の見方がわかるフィールド図鑑、氷河時代の立山

スマートフォン・タブレットに入っていると便利な
ウェブサイトブックマーク、アプリ

GPS・カメラ・電子コンパス機能との連携に際して便利なサイト、アプリをご紹介します。

  • 日本シームレス地質図 (産総研ウェブサイト):
    現地で20万分の1の地図精度の地質を確認出来る(初心者向け)
  • 地質図 navi (産総研ウェブサイト):
    地質図以外にも様々な地図がこのサイト1つで見られる(上級者向け)
  • FieldAccess2(iOS アプリ;無料版有り):
    野外での散策経路の記録や撮影した写真の場所を事後にアプリ内の地図で確認することが出来る
  • 地図ロイド(android アプリ;無料):同上
  • 山地図3D(android アプリ;無料):
    地図を立体で見られるので地形の理解がとても効率的
  • 野外調査地図(android アプリ;無料):研究者向け
  • GeoClino(android アプリ;無料版有り):
    簡易的なデジタルクリノメーター。研究者向け

参考文献

  • 武川俊二・中村みつを(2015)「百万人の山と自然 安全登山ハンドブック」,公益財団法人日本山岳ガイド協会・独立行政法人日本スポーツ振興センター・国立登山研修所,15p.
  • NPO法人自然体験活動推進協議会,「自然体験活動指導者 安全管理ハンドブック」,CONE 自然体験活動推進協議会,http://www.cone.jp/html/special/SHB/index.html ,(参照2016-02-04).
  • 日本火山学会(2015)「安全に火山を楽しむために」,特定非営利活動法人日本火山学会.